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株なび通信vol.3

2010年3月15日発行号
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特集・インタビュー

インタビュー特集
顧客ニーズにスピーディーに対応できる市場を目指す 株式会社大阪証券取引所

先物取引発祥の地にふさわしい挑戦

杉本
 堂島米会所のような先物取引発祥の地でスタートした貴社のDNAは、どのように今に活かされているのでしょうか?
村田
 現代日本の金融センターは東京ですが、大阪は世界で最初に先物取引が行われたという堂島、そして商業都市として栄えた堺のDNAを受け継いでいます。それは、顧客ニーズをいち早くとらえ柔軟に、スピーディーに新しいことに取り組んでいくというところです。昨年7月に取引を開始した「大証FX」は、国内証券取引所では初の23時間取引を実現していますし、続く8月にこれも国内初となりますが、原油価格に連動する「WTI原油価格連動型ETF」が上場しました。



2大エマージングマーケットの統合

杉本
 今年、日本の2大新興市場であるジャスダックとヘラクレスを統合する形になるわけですが、この統合の経緯についてお聞かせください。
村田
 上場していない会社というのは、内陸の池や湖に浮かぶ小舟だと思います。そこはクローズドで周りは知っている人間ばかりという世界で、他人がずかずか上がりこんでくるようなことはない。しかし、株式上場はまさに大海原に打って出るようなもの。規模も大きくなり、想定していない出来事も起こるでしょう。そこで証券取引所が果たす役割は、海に出る時のインフラ、港のようなものと位置づけています。海に出るにあたっての装備に関する準備や航海術の指南などが私たちの役割です。
 そうした港は小規模なものがたくさんあった方がいいのか。それとも、大規模なものの少数精鋭がいいのか。これは環境や時代の要請によって変わります。アメリカでも、ニューヨーク証券取引所とナスダックの2大市場です。小規模な新興市場が増えすぎた今の日本は、明らかに拡散から収束の流れの中にあると言える。それが今回の統合の理由です。



時価総額は小さくても成長できる企業を増やしたい

杉本
 時価総額が一定レベル以上でないと機関投資家が買ってくれないという現実があると思います。にもかかわらず、時価総額が小さい企業が多数ひしめいているのはどうなのでしょうか?

村田
 現在の日本に、最初から時価総額が大きい新興企業がどれだけあるのかという問題もあります。2000年以降、1000社程度の企業が新興市場に上場してきましたが、中にはアクティブなマーケットに後押しされて、時価総額を高く評価された企業もたくさんありました。どちらが原因でどちらが結果なのか。これは卵とニワトリのようで、なかなか難しい。
 私たちとしては、逐一情報を開示できる企業や、経営基盤を固めて成長できる企業を増やしていくように努力しています。上場場所の分散によって日本の株式市場を成長させます。

上場場所の分散によって日本の株式市場を成長させます

杉本
 日本の場合、東証1部上場を最終的なゴールにしている企業が、まだまだ多いのではないでしょうか。新マーケットはどのあたりを目指しているのか、お聞かせください。
村田
 仰るとおり、日本の企業にはそうした傾向が強い。しかし、アメリカのニューヨーク証券取引所とナスダックはそのような関係ではありません。これはもう、日本のカルチャーと言ってもいいのではないでしょうか。そして、正しいものでもないでしょう。実際、世界中を見渡しても、どこの国でも政治の街や経済の街があり、地方を本拠にする大企業もたくさんあります。日本の東京一極集中は、世界的に見ても異質です。
 そのような認識に立ち、私たちの新マーケットは東証1部の2軍に甘んじるつもりはありません。もちろん、大証の2軍でもない。東証さんの戦略というのは、2300社の上場会社のうち1700程度が1部で、400社が2部、200社程度がマザーズという逆三角形です。その中でマザーズは1部へ上がるための控えのような位置づけで、そのための基準も緩和されている。しかし、これだけコンピュータシステムが発達すると、上場する「場所」に拘るのはナンセンスです。要は、流動性があればいい。日本で独特に培われたカルチャーを壊していくのは一苦労でしょうが、時間をかけてアメリカのニューヨークとナスダックのように、「日本の上場信仰」を破壊していくつもりです。
 現実問題として、アメリカなどはファンドなどの機関投資家が地方に分散しているのに、日本の場合、東京に集中しているということも挙げられるでしょう。それ故、決算説明会も東京に集中してしまう。正直なところ、日本にもウォーレン・バフェットさんのようなオマハ(アメリカの地方都市)の賢人が出てこないものかと思っているんです。ただ、今はまだ極めて小規模ですが、地方から発信するファンドも出てきています。変化の兆しは、確実に出てきていると思いますよ。

インベスター・ネットワークス株式会社 代表取締役社長 杉本光生

個性的な企業の上場で、市場のブランド化にも注力

杉本
 アメリカのナスダックの成功の理由には、ブランディングもあるのではないでしょうか?
村田
 そうですね。実は「ナスダック」という響き自体はそれほど格好いいとは思えない。ナスダックブランドをたらしめているのは、インテルやマイクロソフトといった企業で、それがカリフォルニアの自由闊達な雰囲気を連想させるのでしょう。つまり、上場企業の1社1社がブランドを形作っている。私たちの新ジャスダックも、将来経営手腕を発揮される個性的な企業に上場していただけるような環境づくりに、邁進していきます。

杉本
 現在の新興市場の低迷には、過去のさまざまな不祥事、それによる個人投資家の離散も理由と思いますがいかがでしょうか?
村田
 そこは、大いに反省すべきところだと思っています。先ほどの時価総額の問題などもあり、特に2000年以降の新興市場のメインプレーヤーは、機関投資家ではなく、個人投資家でした。個人投資家の多くが新興企業やIPOで傷ついたのは事実です。ですから、新ジャスダックでは環境整備に腐心します。具体的には、上場廃止や上場後の管理の基準に新しいものを数多く導入し、日本で最も上場廃止基準が厳しい市場になります。

ソニーのように、新興企業を国際的な企業に育てたい

杉本
 新興市場に個人マネーを呼び戻そうというわけですね。
村田
 はい。日本の1400兆円の個人金融資産の半分は、預貯金とも言われています。外部環境を見渡すと、リーマンショックを挟んで中国やインド、ブラジルといった新興市場ならぬ新興国の市場が、急激に勢いを伸ばしています。日本の個人投資家が、そちらに熱い視線を注いでいるのも事実でしょう。しかし、莫大な個人マネーの大半が海外のマーケットに流れてしまうのは、国にとっても大きな損失です。そうならないためにも新ジャスダックでは、アメリカのグーグルのような国際的なスター企業・成功企業を育てていきたい。
 松下幸之助さんや井深大さん、盛田昭夫さんらはいまだに名創業者として語り継がれていますが、パナソニックもソニーも最初は新興企業だったわけです。特に、ソニーの前身である東京通信工業は、同じくジャスダックの前身である店頭市場銘柄でした。21世紀の東京通信工業を送り出す―。もちろん、当時とは業種も業態も異なるかもしれませんが、これを市場も経営者も歯を食いしばってやっていけば、個人投資家も「面白い、戻ってこようかな」と考えてくれると思います。


顧客ニーズを優先

杉本
 新ジャスダックは、個人投資家にも利用価値のある、新たなサービスのようなものを考えてますか?
村田
 アナリストレポートの拡充が必要ではないかと考えています。地域ジャスダックフォーラムの組織化など、地域的活動も実現していきたいところです。また、東京の拠点やホームページを活用した情報発信の強化、セミナーを開催するなど、個人投資家に資する地道な努力を続けていきたいと考えています。


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