
佐藤
御社は2008年に経営の完全統合をされ、国際的な中堅石油会社としての地位を確立し、次のステップへ続く規模の会社として成長しようとしていると存じます。今後の計画や目標を、教えてください。
黒田
統合前の国際石油開発と帝国石油の事業展開エリアに重複が無かったため、デメリット無くして油・ガス用権益の地域分散を図ることができました。また、開発技術者の人数もさることながら、その技術を結集することにより、プロジェクト運営能力が向上しました。事業規模では、海外の石油メジャーとまではいかないものの、日本企業の中では唯一それらに次ぐ中堅企業群に肩を並べることが出来、今後10年程の期間をかけて、中堅企業のトップ、言わば準メジャー規模にまで発展していこうと目標を掲げています。
佐藤
イクシス(豪州)、アバティ(インドネシア)などのプロジェクトが期待される御社ですが、規模や特徴を教えてください。
黒田
現在当社では、世界26カ国に進出し、70を超える数のプロジェクトを進めています。特に、イクシスとアバディは、LNGという液化天然ガス開発プロジェクトですが、石油の埋蔵量に加えて、環境への負荷が相対的に低いクリーンエネルギーである天然ガスの埋蔵量を豊富に保有することは、グローバルな競争が激化する中、当社の成長を促す大きな競争力になると考えています。この2つのプロジェクトがもたらすLNGの生産量は、日本の現在のLNG輸入量の2割程に相当する規模となります。
当社の石油・天然ガスの生産量は、原油換算して現在日量約40万バレルです。これを、2020年あたりを目標に80万~100万バレルの規模にしていきたいと考えています。この成長の多くの部分を担うのが、イクシス、アバティの両プロジェクトなのです。


佐藤
環境対応などが叫ばれる中、エネルギー産業の構造は、どのように変わろうとしているのでしょうか?
黒田
今後日本では人口減少社会の中で、エネルギー需要の伸びも頭打ちになると予想されていますが、世界のエネルギー需要は、中国、インドなど新興国をけん引役として、今後も増加することが予想されています。地球温暖化対策の進展によって、いわゆる新エネルギーの役割も高まってくると思いますが、IEA(国際エネルギー機関)などの見通しでは、まだまだ石油・天然ガスも需要の絶対量としては伸びると考えられています。
一方、新たな油田・ガス田の開発など供給面では、新技術の実用化などにより、新たに採掘可能となった石油・天然ガスの埋蔵量が追加され、可採年数はまだ80年以上あると考えられますが、これまでのような簡単に採掘が可能であった場所から、超深海、極地といった開発に巨額の投資が必要となる場所に舞台がシフトしていくことにより、新たな埋蔵量を確保するには、これまで以上のコストがかかると考えられます。こうした考え方が、原油価格の先高感や、資源獲得競争激化の背景となっています。
佐藤
世界を舞台とした資源の確保という観点では、国の政策も大きく影響してくると考えられますが、民主党政権下の資源外交の動きもあわせて今後の展望をお聞かせください。
黒田
政権が民主党へ交代し、政策全般が見直される中、エネルギー政策の変化を心配される声もありました。しかし、現在の経済産業大臣は、エネルギー政策の基本路線は変えない意向と明言されていますし、今後も国家のエネルギー安全保障は大変重要であるという認識は変わらないと思います。昨年10月に大臣がIEA閣僚理事会に出席した際、アブダビを訪問しUAE首脳と会談するなど、就任まもなくの間に資源外交を展開したことは、その積極性がうかがえる出来事でした。大臣の訪問中、当社グループが携わっているアブダビの油田開発における、環境保全から人材育成に至るまでの多面的な活動についてご説明差し上げました。
欧米諸国は、産油国に対して資金面だけでなく軍事面の協力や、国際政治における支援も含め、多岐にわたる関係強化を図っています。産油国の資源ナショナリズムのもと、石油メジャーですら、官民一体となって産油国が求めるものに応えていくことが重要と真剣に考えるに至っています。日本でもこういった取り組みをしているものの、欧米諸国と違ってそうした支援に限界がある日本としては、新規技術や教育・文化的支援などを中心にその期待に応えていくことが必要です。産油国の、将来に備えた石油に代わる産業や人材を育成したいというニーズを常に感じますし、日本のように資源がなくても経済発展できる道を自分たちも歩みたいと考えているようです。そうしたニーズを踏まえ、日本政府も資源外交の面では積極的に対応していただいていると認識しています。
また、日本が平和国家であり続けることも、産油国は魅力に感じています。領土的野心がなく、ビジネスマナーのしっかりした日本企業の進出を望む産油国も多いのです。
佐藤
今後、消費者にも感じることが出来る「変化」を教えてください。
黒田
環境に関して言うと、当社が生産する天然ガスは、他の化石燃料と比較して、例えば石炭と比べると燃焼した際のCO2排出量が5.6割に抑えられることから、日本だけではなく世界も注目しています。世界の一次エネルギー需要をみると、石炭と石油を合わせてまだ60%以上を占めています。化石燃料に取って代わるエネルギーはすぐには出てこないものの、その中でいかにエネルギー効率を上げていくかという点で、クリーンな天然ガスの割合を増やしていくという役割も、私たちは担っていると認識しています。そうした意味で、天然ガスをさらに使いやすくするための技術開発にも力を入れているところです。
また、緊急時にどう対応していくのかということを考えることも、消費者の方々への影響を考えると大変重要です。世界のどこかで戦争などが起こっている時でも、日本の消費者・生活者に優先的にエネルギーを供給出来るのかといったことを考えなくてはいけません。緊急時でも安定的なエネルギー供給をお約束するという、消費者・生活者の皆様の安心材料を増やすための取り組みは、中々平時にはお気づきにくい点かとは思いますが、オイルショックなどを経験された方には実感していただけるかもしれません。
佐藤
過去数年の間に、原油価格がかなり上下しました。原油価格に関するお考えを教えてください。
黒田
原油価格が上がれば当社の販売価格が上がりますので、一時的に収益も増加しますが、その後は需要の減少や他のエネルギーへのシフトといった反動があります。やはり価格が安定的に推移することが、当社のビジネスにも先行きを見据える意味で大事と考えています。ただ、原油価格は需給のバランスだけではなく、色々な要素が影響してきます。例えば地政学的なリスクがあると変動しますし、一昨年原油が高騰して、1バレル=140数ドルというところまで行ったわけですが、このあたりになると投機的な資金が流れ込み、ファンダメンタルな需給関係では考えられないような価格へと高騰してしまうということもあります。産油国自体も高ければよいと考えているわけではないので、産油国、消費国双方が連携して対応することが必要と考えています。一企業としては、原油の値段が上下しても収益はしっかり確保する、そういう収益構造やプロジェクトの構成が大事と認識しています。
佐藤
最後に株主還元に関する考え方を教えてください。
黒田
株主還元については、積極的な投資を通じた埋蔵量、生産量の維持・拡大による持続的な企業価値の向上と、配当による利益の直接的な還元との調和を中長期的な視点を踏まえつつ図っていくことを基本方針としています。
現在のステージは成長過程であり、大型プロジェクトへの投資を優先していますが、イクシス、アバティの両プロジェクトが安定期に入りましたら、新たな株主還元策を検討していく心づもりをしています。
